CASE

技能実習生の妊娠出産による帰国要望に

ご相談内容
業種:介護事業

介護事業を営むG社さん。
受け入れた技能実習生の外国人が出産のため帰国を要望。

介護事業で技能実習生の外国人を受け入れています。
受け入れた外国人が出産するため帰国するとのこと、どうしたらいいかご相談を承りました。

G社ご担当者様

技能実習生として受け入れた外国人スタッフから出産のため帰国したいと言われました。
どうしたらいいかわからなくて。

天満

なるほど。
帰国したいというお申し出なんですね。

G社ご担当者様

そうですね。
日本で出産しては?と聞くのもいいのかどうかもわからなくて。

天満

かしこまりました。
ひとまずご相談いただけてよかったです。
御社としては帰国せずに日本に残って欲しいというお気持ちが前提ということでよろしいですか?

G社ご担当者様

はい。
技能実習の期間中は帰国せずに日本に残って欲しいと思っています。

天満

結論から申しますと日本で出産するのはよほどの理由がない限りおすすめできません。
ただお互いのご意向もあるかと思いますので法律と選択肢をよく知ってから、話し合いを深めていくことが求められます。

G社ご担当者様

はい。

天満

まずは現時点でG社さまとしてやってはいけないことは「解雇」です。または技能実習生ご本人に不利益があるような扱いをしてはいけません。
出産を理由に解雇することは日本人・外国人問わずできません。
これは男女雇用機会均等法で定められています。

G社ご担当者様

なるほど。その点は大丈夫です。
実際、帰国するとかそういうのはいいんでしょうか?

天満

ええ。
出産したい場所は個人の意思が尊重されるべきものですからそれを拒否することはできません
帰国して出産という判断となった場合は技能実習の中断ということになります。
落ち着かれたらご本人様との相談の上、再開することも可能という運びになります。

G社ご担当者様

なるほどそうなんですね。

天満

技能実習の手続き面の他、日本で産むのと母国で産むのとでどういう違いがあるのかは御調べになりましたか?

G社ご担当者様

いえ。

天満

ご本人も不安や戸惑い、混乱の状態にある中だと思います。
こちらをご覧ください。

G社ご担当者様に技能実習生が妊娠・出産した時の対応方法や
制度等を取りまとめた資料を提示しながら説明を続けました。

G社ご担当者様

(資料を見ながら)
えっと、これをどのように伝えたらいいですか?

天満

その技能実習生には大きく二点「技能実習をいったん中断する必要がある。ただ、希望すれば再開することはできる。」ということと「出産は日本ですることもできるし、母国ですることもできる。どちらの選択をしても産休育休は利用できるし、出産育児一時金も受給できる」ということを伝えてください。

G社ご担当者様

えっ?そうなんですか?

天満

ええ。そうです。
社会保険に加入している技能実習生に認められる権利です。
G社さまとして妊娠中の従業員に対する配慮や義務については日本人と変わりありません。

出産育児一時金は
「1.社会保険に加入している」そして
「2.妊娠4か月(85日)以上の出産である」
日本人同様の2つの条件を満たしていれば同じように外国籍の人でも受け取ることができます。

外国人の被保険者が母国で出産する場合、出産育児一時金を受給するには
社会保険に加入中又は国民健康保険の資格を継続していることが必要です。

また、多くの場合医師の証明書とその日本語の訳文等が必要となります。
詳細は加入中の協会、組合にご確認ください。

産前6週間・産後8週間は労働基準法第65条に基づいて就業はできず、産休期間となります。
出産後、育児のため取得できる育児休暇は
「子どもが1歳6か月に達する日までに労働契約が満了することが明らかでない技能実習生」が取得できます。
満了時点は在留期限ではなく、残りの技能実習期間や次の技能実習の予定での判断となります。

G社ご担当者様

なるほど。そうなんですね。

天満

次に「仮に日本で産む選択をし、出産した後」の話です。
生まれてきたお子様は6か月以内に母国に帰らなければならない」旨を技能実習生ご本人に伝えてください。

G社ご担当者様

えっ?なんでですか?
どういうことですか?

天満

生まれてきたお子様に在留資格が与えられないからです。
日本は出生地主義ではありませんから、子どもは技能実習生ご本人の母国の国籍の子という扱いになるわけです。そして技能実習生には家族帯同は認められていませんから、子どもには在留資格が与えられないことになります。

G社ご担当者様

えっ?あまりにも酷じゃないですか?
結局技能実習生も帰国しなければならないってことですか?

天満

現実的には生後6か月に満たない子と一緒に飛行機に乗って帰らなければならない、ということです。ご本人にも子どもにもかなり酷な渡航かと思います。

G社ご担当者様

それはあまりにも。。。

天満

技能実習生が日本で出産するとそのようになってしまいますから、冒頭お伝えしたようによほどの理由がない限りおすすめできません。

G社ご担当者様

事前に相談してよかったです。

天満

技能実習生ご本人とお話し合いの上、「母国で出産するか」「日本で出産するか」お互いに意思確認しましたら手続きはこのようになります。

G社担当者様に妊娠出産時の手続きのフローをまとめた資料を提示しながら説明を続けました。

G社ご担当者様

はい。

天満

現実的に大きく2つの可能性があるかと思います。

・技能実習を中断して、一時帰国、母国で出産その後落ち着いたら子どもを母国に家族に等に預けて日本に戻ってきて技能実習を再開。
・技能実習を終了、再開意思なし

G社ご担当者様

そうですね。
そのどちらかになるかと思います。

天満

もちろん前者で進めても出産後の状況で気持ちが変わり、後者になることもあります。
いずれの場合も「技能実習実施困難時届出書」を提出する必要があります。
手続方法は~

G社担当者様にそれぞれのケースに応じた対応方法をご案内し、その日はご相談を終えました。

数か月後、G社さまから技能実習生が母国で出産することを選び、
落ち着いたら技能実習を再開する予定だと連絡がありました。

日本人の従業員だと妊娠出産時の対応は慣れていても外国人技能実習生だったら
どうしたらいいか戸惑ってしまうのも無理はありません。

そうした場合、同じように技能実習生も戸惑いの中にいることがほとんどです。

お困りの際には一度我々のような機関に相談してみてください。