COLUMN 監理団体の許可取消と技能実習計画の認定取消

監理団体の許可取消と技能実習計画の認定取消

2025.01.10

1993年に外国人技能実習制度が創設されて以降、制度の改定を重ねて30年の時を経て技能実習制度に代わり育成就労制度が新設されることとなりました。

技能実習制度は長きにわたり問題視されてきましたが社会でどれくらいの許可・認定が取り消しされてきたのかはあまり知られていません。
2024年11月8日現在、実習生を受け入れる企業(実習実施者という)を指導、監督する監理団体は3750事業者が許可されています。

その中で2018年以降は以下の件数の許可が取り消しされています。

外国人技能実習機構公開データよりグラフ作成
外国人技能実習機構公開データよりグラフ作成

※複数の理由により一件の許可取り消し事案が存在することにより、理由と許可取り消しの件数は一致しません。

過去7年の内に許可が取り消しとなったのは49事業者あり、許可取り消し措置となった理由は大きく9つのパターンで構成されていました。許可取り消し措置となった理由の全63件の内、約30%にあたる20件が「実習実施者に対する監査・訪問・指導の不実施」が挙げられています。

当外国人材相談センターに寄せられるご相談にも度々「技能実習監理団体が実習実施者(企業)に対して責務を果たしていないのでは?」と思われるようなお電話・メールを頂戴します。

技能実習計画の認定取り消しについて

一方、実習実施者(技能実習生受け入れ企業)数と、技能実習計画の認定取り消し(受け入れ企業に責任のあるもの)は過去7年の間に次のようになっています。

外国人技能実習機構公開データよりグラフ作成

技能実習計画とは、実習実施者(技能実習生受け入れ企業)が作成した技能実習の詳細をまとめた計画書類のことで技能実習生ごとに認定をいただくものです。

過去7年における認定取り消し件数は6,981件、社数は533社ありました。
一年間ではおよそ60000の事業者の中から認定取り消しとなっている事業者は100~150ほどと、割合としては0.1~0.2%程度と少なく感じるかもしれませんがその内容によっては件数や割合が少なくとも可能な限りゼロに近づける必要があります。

外国人技能実習機構公開データよりグラフ作成

※複数の理由により一件の認定取り消し事案が存在することにより、理由と認定取り消しの件数は一致しません。

認定取り消しには9つのパターンがあり、その中の多くは労働安全衛生法違反によって技能実習の認定取り消しが多数を占めるものとなります。事業所として安全な環境を確保できておらず、労働災害防止措置が不十分な場合、合わせて技能実習の認定を取り消しとなることとなります。

労働安全衛生法違反以外の理由については「実習計画を逸脱した労働指示」が続き、内容としては予め認定を受けた作業以外の業務を技能実習生に従事させていた、というものが主となります。

続けて認定計画に従った賃金の支払いをしていない、最低賃金以下で技能実習をさせていたとした労働基準法違反不法就労をさせていた事案、技能実習生への著しい人権侵害といった事案が後に並びこの4つが合わせて58%を占め、認定取り消しを受けた事業所で技能実習生が厳しい環境下に置かれていたことがわかります。

大多数の実習実施者のみなさまにおかれましてはこのような事案と同様に扱われることは不本意かと存じます。ただ、認定取り消しとなった実習実施者も当初から不正な目的で技能実習生を受け入れ始めたとも限りません。受け入れた技能実習生とのコミュニケーションがうまくとれなかったり、放任な監理団体とお付き合いを続けたことや、悪質な監理団体からの助言によって不正をはたらくことになってしまった事業者もいらっしゃる可能性があります。

そのため、許可取り消しとなるような監理団体との取引をできるだけ避けるにはどのような対策をとればよいのか、また、技能実習生とうまくコミュニケーションをとって仕事をしていくにはどうすればよいのか、という視点で外国人材を受け入れ検討する必要があります。

当センターでは従前より「監理団体が、外国人材の日本語能力にどれくらいこだわっているか」がポイントになると考え、主張しております。

日本語を一定のレベルまで学んだ上で日本に来る外国人は日本に来て仕事に就いても問題を起こすことはほとんどありません。それは日本語学習の困難さを乗り越えて日本語能力を身に付ける努力をしてきた方たちは真面目で勤勉な資質を持っているからに他なりません。さらに日本語がある程度理解できることによって日本で生活することのストレスが大幅に軽減されることも大きな要因です。また、そのことを理解している監理団体は日本語教育への知見が深く、企業への人材に関するアドバイスも適格なことが多いように思います。

技能実習監理団体とのお付き合いを考えておられる企業様はこの点にひとつ着目して、判断基準にされるとよいかと思います。

当センターでも監理団体を探すところから技能実習生の受け入れを検討している企業様のご相談を受け付けております。お気軽にご相談ください。