COLUMN 技能実習と特定技能の違い

技能実習と特定技能の違い

日本で外国人を雇用するためには外国人が就労ビザを取得していることが必要です。就労ビザは多種あり、専門分野での就業を目的としたものからそうでないものまで16種類の就労ビザがあります。

その中でも特に当センターで相談の多い「技能実習」と「特定技能」の違いについて説明します。
現在の技能実習制度で9割以上を占める「団体監理型」の技能実習制度が創設されたのが1993年(平成5年)、一方、特定技能が創設されたのは2019年とつい最近のこととなります。
期間別に見るとその受け入れ人数は次のように推移しています。

左へスワイプできます

平成25年 平成26年 平成27年 平成28年 平成29年 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年 令和5年
技能実習生 136,608 145,426 168,296 211,108 257,788 308,489 383,978 402,356 351,788 343,254 412,501
特定技能 1,621 15,663 49,666 130,923 208,462

厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)によると
令和6年10月末時点で技能実習は470,725名、特定技能は206,995名となっています。

技能実習と特定技能はそれぞれ異なる在留資格ですが、技能実習→特定技能への移行が可能であり、
2020年から2022年までの期間においてはコロナ禍における入国制限による新しい特定技能・技能実習生の受け入れが皆無となり、
技能実習を修了した方が特定技能へ移行して日本での就労を継続したことにより技能実習生が減少し、
特定技能生が増加した背景があります。

この特殊な期間を除き、技能実習生も特定技能生も増加を続けています。
また、令和6年10月末時点では技能実習と特定技能は就労ビザの中の30%を占める割合となっています。

違い1制度の主目的

技能実習制度は「日本の技能や技術、知識を開発途上国へ移転し、その地域の経済発展に寄与することを目的」とした制度ですが、特定技能は「国内の人材不足を解消し、特定の産業分野で活躍する外国人を受け入れること」を目的としています。

技能実習制度 日本の技能や技術、知識を開発途上国へ移転し、その地域の経済発展に寄与すること
特定技能 国内の人材不足を解消し、特定の産業分野で活躍する外国人を受け入れること

技能実習は技能移転が目的であり、人手不足の調整弁であってはならないという特徴があり、対して特定技能は人手不足を補うための在留資格ということになります。

違い2受け入れ職種とその作業内容

技能実習制度は「1号・2号・3号」と分類されており実習期間で区分され在留期間が異なります。特定技能も同様に「1号・2号」と分類されていますが就業期間での区分ではありませんが、在留期間が異なります。実務経験や技能レベル、試験への合格・健康状態によって区分されています。

在留期間 対象職種
技能実習1号 1年以内(実習1年) 制限なし。※同一作業の反復のみで修得できるものでなく、また、制度の目的である開発途上地域等への技能移転や経済発展に寄与する技能であれば、技能実習1号の在留資格にて1年以内の技能実習が認められる場合があります。
技能実習2号 2年以内(実習2~3年目) 移行対象職種のみ。2024年9月30日時点で
1. 農業・林業関係(3職種7作業)
2. 漁業関係(2職種10作業)
3. 建設関係(22職種33作業)
4. 食品製造関係(11職種19作業)
5. 繊維・衣服関係(13職種22作業)
6. 機械・金属関係(17職種34作業)
7. その他(21職種38作業)
技能実習3号 2年以内(実習4~5年目) 移行対象職種のみ。
特定技能1号 基本は1年更新で、6か月・4か月毎に更新のパターンもあり。通算で上限5年まで 1. 介護分野
2. ビルクリーニング分野
3. 工業製品製造業
4. 建設分野
5. 造船・舶用工業分野
6. 自動車整備分野
7. 航空分野
8. 宿泊分野
9. 自動車運送業分野
10. 鉄道分野
11. 農業分野
12. 漁業分野
13 飲食料品製造業分野
14. 外食業分野
15. 木材産業分野
特定技能2号 3年,1年又は6か月ごとの更新。 2. ビルクリーニング分野
3. 工業製品製造業分野(機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理)
4. 建設分野
5. 造船・舶用工業分野
6. 自動車整備分野
7. 航空分野
8. 宿泊分野
11. 農業分野
12. 漁業分野
13. 飲食料品製造業分野
14. 外食業分野

技能実習1号・2号を経て特定技能1号へ移行できる職種であれば通算8年まで外国人材と職を共にすることができる計算となります。
さらに、特定技能2号に在留資格を変更した場合、受入機関との雇用関係が続く限り在留可能となります。

特定技能2号はその分野のエキスパートのような人材で、2023年にその対象分野が拡大され、各分野で試験が開始されたことも合わせて特定技能2号の在留資格を持つ方が増えています。

令和4年6月末 令和5年6月末 令和6年6月末
特定技能2号 8名 12名 153名

違い3転職・職場変更

技能実習制度では受け入れ先の企業で技能を習得することを条件に在留が認められるため、転職に相当する受け入れ企業の変更は原則できません。一方、特定技能は「就労」なので、転職は自由ということになっています。
しかし、転職先でも特定技能試験に合格していることが必要になりますのでほとんどの場合、「同一職種であれば」転職可能ということになります。
他職種に転職する場合は当該職種での特定技能試験に合格している必要があります。

技能実習 原則不可。
特定技能 同一職種であれば可能。ただし、他職種の場合でも、転職先の職種の特定技能試験に合格していれば可能。

違い4受け入れの方法と人数

技能実習は企業単独型を除いて自由に受け入れができるわけではなく、外国人技能実習機構という国家機関より認可を受けた監理団体を通じて、外国側の政府の許可を得た送り出し機関から受け入れることができます。
一方、特定技能については登録支援機関へ管理委託をするか、自社で管理するかを選択することができます。
人数についてはそれぞれ事業所の規模によって異なります。

受け入れ方法 受け入れ人数
団体監理型技能実習 監理団体を通じて受け入れ 事業所(実習実施者)の規模により異なる。※優良基準適合の監理団体なら許可監理団体(特定)に比べ、2倍の人数を受け入れることが可能。
特定技能 登録支援機関を通じて受け入れ、または自社管理で受け入れ 人数に限りは無いが、介護・建設分野においては常勤職員の人数を超えないことが定められている

違い5家族帯同

技能実習においては家族帯同は一律認められていませんが、特定技能においては2号のみ要件を満たせば配偶者・子どもを帯同させることができます。

技能実習 一律に認められていない。
特定技能 2号のみ要件を満たせば家族帯同可。

以上のような違いが大きいポイントとして挙げられます。
技能実習においては今後「育成就労」へと変わっていくことが決まっていますが2025年2月現在では上記の制度で運用されています。

このような違いから考えたいこととしては技能実習・特定技能の在留資格を持つ外国人は増えており、外国人材は今後も増えることが予想されます。人材不足の企業にとっては有用な人材確保の手段として外国人材の雇用はますます進んでいくことも想定されます。

しかしながらいざ、足を踏み出そうにも「言葉の壁はどうすればいいのか」「給与や条件面をどうすればいいのか」「どのようなトラブルが起こるかわからない」そんな疑問が出てくることは当然です。

特定技能外国人を即戦力として募集するにも、経験の無い企業様ですと知らないことや戸惑うことが多々あります。そうした場合にはサポートの手厚い登録支援機関に依頼するのもいいですし、技能実習制度を活用するのもよいでしょう。

技能実習制度はそもそも「技術を学び、母国へ持ち帰って活かしてもらう」ことを主目的としていますが冒頭説明申し上げたように「特定技能へ移行」する方も少なくありません。3年に渡る実習を通じて技能実習生にも企業への愛着心が芽生えることや、企業側も技能実習生に対して「本格的に働いてもらえたら」という気持ちが出るのは不思議なことではありません。
技能実習を通じて愛着心を持ち、在留資格を移行して従業員になってくれる特定技能外国人はきっと企業にとっても手放したくない人材であることと思います。

私たちはそんな事例をいくつも見てきました。
外国人材の雇用に関してお考えのことがある方は当センターへ一度ご相談いただければと思います。