相矛盾しがちな環境保全と開発を両立させなければ人類が抱える問題は根本的には解決しない。
そんな考え方が初めて示されたのが1972年国連人間環境会議(ストックホルム会議)です。
20年後の1992年国連環境開発会議において「持続可能な開発」は中心的な考え方として取り上げられ、
その後、2000年の国連ミレニアム目標、2015年のSDGs(持続可能な開発目標)へと受け継がれています。
近年はファッションのようにSDGsを掲げる団体や企業が増えてきており、一般的にも耳にする機会が増えてきました。
そもそも今になってことさらに「SDGsに取り組むべき」と宣言するようなものではなく、当たり前のこととして今を生きる私たち大人が取り組むべきこと。
日常的な活動そのものが持続可能な開発に沿ったものにしなければ地球がなくなってしまう。
そんなことがSDGsの本質なのですが、2030年までの目標として17のアジェンダに沿って行動していくことで「持続可能な開発」に基づく永続可能な社会が実現していくように工夫をこらしているSDGsのしくみは、今までの目標とは異なるやり方を採っていると言えます。
私たちAPSIPも特段SDGs達成に向けて新しく取り組みを始めるということではありませんが、
私たちの活動をSDGsに照らすとどのように意味づけられるのかについて考えてみました。
SDGs 4. 質の高い教育をみんなに
Target 4.4 :2030 年までに、就職や働きがいのある人間らしい仕事、起業に必要な、技術的・職業的スキルなどの技能をもつ若者と成人の数を大幅に増やす。
出典:外務省 JAPAN SDGs Action Platform
そもそも「持続可能な開発」は
人間が人間らしく生きていけるための経済のあり方と環境の両立を考えるところから生まれました。
そこで、経済のあり方を考える時に、人びとの仕事は人間らしい仕事でなければならず、
そのためには技術的・職業的スキルを身につけた若い人材が多く輩出されることが必要です。
この第4の目標はこの考え方を明らかにしています。
外国人技能実習制度も本来の目的は「技能、技術又は知識の開発途上国等への移転」であり、私たちAPSIPも技能実習を通じて外国人技能実習生に日本を好きになってもらい、日本で身に付けた技能を母国で存分に活かし、生産的な仕事をしてもらって平和と途上国の発展に寄与することを願っています。
さて、令和5年1月27日に厚生労働省から「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)」が発表されました。
日本で雇用されている外国人の雇用状況が掲載されています。
この資料によると「外国人労働者数は約182万人。過去最高を更新。」とのことです。
内訳を見ていきましょう。
①専門的・技術的分野 の在留資格 | ②特定活動 | ③技能実習 | ④資格外活動 | ⑤身分に基づく在留資格 | ⑥不明 | 合計 |
479,949 | 73,363 | 343,254 | 330,910 | 595,207 | 42 | 1,822,725 |
外国人労働者は過去最高を更新し「技能実習生」は34.3万人で全体の18.8%を占めます。
この数値の評価は人によって異なりますが、推移を比較することでもう少し現状が見えてきます。
前年(令和3年)は35.1万人で20.4%。前々年(令和2年)は40.2万人で23.3%です。
一方、「専門的・技術的分野 の在留資格」については令和4年、47.9万人で26.3%。
前年(令和3年)は39.4万人で22.8%。前々年(令和2年)は35.9万人で20.8%です。
令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | |
---|---|---|---|
①専門的・技術的分野 の在留資格 |
359,520人 (20.8%) |
394,509人 (22.8%) |
479,949人 (26.3%) |
③技能実習 | 402,356人 (23.3%) |
351,788人 (20.4%) |
343,254人 (18.8%) |
技能実習生はここ3年間で減り続け、反対に専門的・技術的分野の外国人材は増え続けています。
一見すると「即戦力」を増やして「途上国への貢献(技能移転)」は減らしているという数字に見えますが、
実際のところはコロナ禍で新規の技能実習生が入国できない中、
技能実習2号を修了した技能実習生が「特定技能1号」へと在留資格を変更して
統計上は「専門的・技術的分野 の在留資格」へと移行しているにすぎません。
一度は耳にしたことがあるであろう「技能実習制度の問題」。
こういった声は今も残り続けています。
悪い感想を抱かれたことも事実として、
実態がどうであったかやニュースになるような事例があったのかを
俯瞰的に見るのにひとつ参考になるものとして
「技能実習生の失踪者数の推移(平成25年~令和4年上半期)」があります。
出典:法務省(技能実習生の失踪者数の推移(平成25年~令和4年上半期))
この資料によると平成30年(2018年)まで技能実習生の失踪者は数を増やし続け、以降は減少傾向にあるように見えます。
実際の技能実習生の数から、失踪割合にしてみますと
平成25年 | 平成26年 | 平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
技能 実習生 |
136,608 | 145,426 | 168,296 | 211,108 | 257,788 | 308,489 | 383,978 | 402,356 | 351,788 |
失踪者 | 3,566 | 4,847 | 5,803 | 5,058 | 7,089 | 9,052 | 8,796 | 5,885 | 7,167 |
失踪 割合 |
2.61% | 3.32% | 3.44% | 2.39% | 2.74% | 2.93% | 2.29% | 1.46% | 2.03% |
令和2年(2020年)は外出自粛要請の影響もあるのでしょうか、
極端に低くなっておりますが、概ね令和元年(2019年)以降、減少傾向にあるようです。
技能実習生の失踪については2019年に法務省が主体となるプロジェクトチームが
失踪研修生に行った聴取したところ技能実習生の失踪動機は
低賃金 | 1,929人 | 67.2% |
労働時間が長い | 203人 | 7.1% |
暴力を受けた | 142人 | 4.9% |
帰国を強制された | 71人 | 2.5% |
保証金、渡航費用の改修 | 20人 | 0.7% |
実習終了後も稼働したい | 510人 | 17.8% |
指導が厳しい | 362人 | 12.6% |
不明である旨記載 | 4人 | 0.1% |
その他 | 439人 | 15.3% |
無回答 | 5人 | 0.2% |
引用:https://archive2017.cdp-japan.jp/files/download/dVCK/tHc4/CoOr/aEBz/dVCKtHc4CoOraEBzhsgHqwE0.pdf
となっています。
これについてはやはり技能実習制度を労働力の調整手段としてしか見ていない経営者が多いことが見てとれます。
歴史的な背景として技能実習制度は永らく労働法制の適用除外に置かれてきて経営者側が
「日本人がやらない仕事を低賃金で働いてくれる外国人」
として技能実習生を位置づけてきたことがあります。
そこで、まずは適正な賃金を支払って技能実習生を雇用するのは
日本社会として当たり前のことにしなくてはなりません。
当たり前のことを当たり前にやった上で、より「人間らしい仕事」として技能実習を位置づけていくためには、人と人との意思疎通を密にして実習生と企業側(実習実施者側)のコミュニケーションが取れるようにする必要があると考えられます。
外国人技能実習生には雇用する会社だけでなく、本来は技能実習生を保護する立場であるはずの監理団体がついています。
監理団体が仲介して労働条件の話合いや不正・不法行為の対策について
実習生と企業に十分な話し合える機会があれば、これだけの数の失踪という結果に結びつくとは考えにくいです。
それにも関わらずこのような状況になっている。
これには以前から申している技能実習の闇の部分が影響しています。
私たち日本が今後、本気でSDGs(持続可能な開発目標)として「就職や働きがいのある人間らしい仕事、起業に必要な、技術的・職業的スキルなどの技能をもつ若者と成人の数を大幅に増やしていく」には現場の技能教育の質を高めていくことと共に日本語能力を高める教育が重要です。
APSIPでは日本語能力の高い技能実習生に来てもらうため、現地での日本語能力の修得に力を入れています。
私たちが英語を含む外国語を学ぶ難しさと同じくらい、またはそれ以上に日本語を修得することは難しいことです。日常会話レベルの外国語を修得する勤勉さと熱意がある人は国籍関係なく問題を起こすことはなく、失踪という結末にはなりません。
日本に来てくれた技能実習生がひとりでも多く日本を好きになってくれるように、私たちは日本へ迎え入れる前からの日本語教育へ取り組んでいます。
残念ながら現状(2023年春)では「日本語ができる技能実習生」の必要性が実習実施者(企業)の皆さんに認識されるところまでは行っていても、「日本語ができる技能実習生」を実際に扱っている監理団体が多くないため、「あっても知られていない」という状況です。
そのため、私たちAPSIPも企業様から積極的に技能実習の紹介元として選んでいただけていない状況です。
SDGsの観点から技能実習生の採用を考えておられる企業の皆さん、ぜひお声がけください。
外国人材採用に対する無料の個別セミナーと無料のコンサルティングを行います。
日本を好きになってくれる外国人技能実習生を日本に招いて、一緒にSDGsを実現しましょう。